観光コーディネーターとは、価値観やライフスタイルの変化に対応した新しい観光プランを提案し、その地域のブランドを確立していける人をいいます。地域と連携しながら地域の魅力を編集し、「エリア・アイデンティティ=地域ブランド」を確立していく役割を担います。観光コーディネーターは、主に観光コーディネーター資格保有者を指しますが、資格の有無に関わらず、観光コーディネートの重要性はますます高まっています。観光コーディネーター専攻では、全社を挙げて地域の魅力創出に取り組んでいる星野リゾートのケースをモデルに、地域の魅力づくりや地域の課題解決について実践的に学んでいきます。
お客様のニーズに応じて、5つのサブブランドを展開している星野リゾート。そのうちの一つ「OMO(おも)」は、観光をメインにした都市型カジュアルホテルです。さまざまな特徴の中で特にユニークなのが、ホテル周辺エリアに精通し、宿泊客を周辺観光にナビゲートしてくれる「OMOレンジャー」の存在。日本工学院情報ビジネス科ホテル・観光コースでは、実際にOMOの施設に足を運び、OMOレンジャーの活動などをモデルに、観光コーディネートについてケーススタディで学びます。
CASE STUDY
「OMO7大阪」の取組み
「観光人材に必要なのは、自分で考え、地域の魅力を創り出す力」
お客様の旅のテンションを上げるため、「OMO」は生まれました。
OMOのブランドコンセプトは、「旅のテンションが上がる都市観光ホテル」です。都市部の多くのホテルはビジネス客を意識した仕様になっていて、観光客の旅のテンションって実は下がっているのではないかという仮説から生まれたブランドです。だから観光目的で来るお客様のニーズに応えられるよう、カジュアルで革新的なインテリアを施し、ロケーションも駅から少し離れたところにホテルを構えています。そして、ガイドブックでは知り得ないような、リアルタイムのローカルな面白さを紹介する取組みに力を入れています。それが、街歩きをサポートする「Go-KINJOサービス」です。「ご近所マップ」と「ご近所ガイドOMOレンジャー」の2つのコンテンツで構成されており、お客様を周辺観光へ誘います。
都市観光を演出する、ご近所マップとOMOレンジャー。
「ご近所マップ」は、私たちスタッフが自分たちの足で探したお店をマッピングしたものです。100店舗以上回って実際に飲食し、お客様に大阪らしさを感じていただけるディープなスポットをチョイス。それをもとにスタッフ間で議論を重ね、串カツのお店を巡るツアーや、近所の卸売市場を訪ねて関西の「だし文化」に触れるツアーなどの観光プランを作りました。そして、そのツアーの案内役を務めるのが「OMOレンジャー」です。OMOレンジャーは戦隊ヒーローのように5色に分かれ、それぞれが「散歩」や「グルメ」など異なる役割を担っています。現在は約20名がOMOレンジャーのスキルを持っており、お客様のご要望に応じておすすめスポットへお連れしています。
足で探した地域の魅力を、多くのお客様に楽しんでほしい。
地域の魅力創出こそ、観光コーディネートの醍醐味です。
観光を通じて地域の魅力を発信する「観光コーディネート」の醍醐味は、地元の人もまだ気づいていないような魅力を伝えることで、それに興味を持った人が実際にその地域に足を運んでくださることです。また、私たちは地域の伝統文化や特産品とコラボレーションし、岸和田のだんじりの木彫り職人さんや堺市の伝統工芸「注染手ぬぐい」の職人さんのお仕事などを紹介しているのですが、職人さんが減りつつある時流の中で、興味を持った方の中から職人をめざす人が出てきています。星野リゾートは全社的に「地域の魅力創出」を非常に大事にしているため、いっそうこの仕事にやりがいを感じています。
観光コーディネートに大切なのは、その地域を熟知すること。
地域と連携して魅力づくりを行う際、私がもっとも大切にしているのは、街を知ることです。街はリアムタイムでどんどん変わっているので、私も毎日街をまわって新しいお店を開拓しています。そうすると、その街がどんどん好きになってくるんですね。地域と連携して観光をコーディネートする仕事をめざす人には、街を歩き、その街を好きになってほしいと思います。それも観光コーディネーターに必要な一種のスキルだと思っています。
気づきを発想に変える力を、ぜひ養ってください。
野部 洋平 さん
(株)星野リゾート OMO7大阪 サービスチーム・ユニット ディレクター
外資系ホテルに勤務後、星野リゾートのフラットな組織文化に魅力を感じて転職。(株)星野リゾート入社後は、「リゾナーレ熱海」「OMO5 東京大塚」「星のや東京」などで、広報やサービスチームで活躍。「OMO5 東京大塚」で新規ブランド「OMO」の立ち上げに参加。2022年4月「omo7大阪」の開業以降、現職。
ツアー旅行を企画し、実現するためのスキルを養います。
ツアー旅行に関する基本を学び、ツアーを企画する能力を養います。ニーズの調査から、ターゲット設定、企画立案まで、ツアー企画の作り方を実践的に学習。また、企画したツアーを実現するために欠かせないプレゼンテーション能力も磨きます。
日本全国の地域文化や特性など、観光人材に必要な知識を学びます。
日本には地域ごとに特性があり、それぞれに地域固有の文化が根付いています。歴史的にどんな産業が盛んなのか、どのような祭り・郷土芸能があるのか、温泉や森林などの天然資源はあるのか—。全国各地の地域文化や特性を正しく理解することで、日本の観光産業に広く貢献できる力を養います。
OMOレンジャーならぬ「KAMAレンジャー」に変身!
観光コーディネーター専攻では、地域連携の一つとして、「かまた祭」で、星野リゾートのOMOレンジャーをお手本にした「KAMAレンジャー」を企画・実施しています。これは、学生が5色(赤・青・黄・緑・ピンク)に分かれ、テーマカラーに沿ったお店や場所を紹介するというもの。ブルーは写真映えスポット担当、グリーンはお散歩スポット担当など、蒲田の名所を案内します。街のマップやお店の紹介パンフレットも学生たち自身で制作し、観光コーディネートのおもしろさを体験しています。
KAMAレンジャーの取組み
蒲田校の学園祭として盛大に開催される「かまた祭」。ホテル・観光コースでは、来場者の方々にオリジナルの街歩きすごろくに挑戦していただき、遊んでくれた人に大田区のお土産100選のお菓子をプレゼント。楽しみながら大田区の企業の商品に親しんでもらいました。
星野リゾート「OMO」のご近所マップを参考に、学生たちが蒲田街歩きマップを制作。お店や公園など18のスポットが紹介されており、5人のKAMAレンジャーがそれぞれの担当スポットに案内します。
大田区蒲田には、さまざまな名所があります。昭和43年から蒲田のランドマークとして親しまれてきた東急プラザ蒲田の「幸せの観覧車」、古タイヤを利用した怪獣のモニュメントがある「西六郷公園(タイヤ公園)」、いつも学生たちで賑わっている「工学院通り商店街」、等々。ホテル・観光コースでは、星野リゾートでのインターンシップも活発に行われているので、将来本家のOMOレンジャーを体験できる日が来るかもしれません。
幸せの観覧者
タイヤ公園
工学院通り
商店街
東急電鉄
ホテル・観光コースでは、企業や地域と連携したさまざまな取組みを行っています。その一つが、大田区や大田観光協会などが主催する「おおた商い・観光展」への参加です。おおた商い・観光展とは、大田区の特徴ある商品や観光地としての資源を生かし、大田区ならではの魅力を発信する一大イベント。2021年は、大田区内約150の事業者と観光スポットが参加して、お店やSNSなどでさまざまなイベントが行われました。ホテル・観光コースでも、「ホテル オリエンタル エクスプレス 東京蒲田」のスペースを借りて、大田区の企業の商品紹介や飲食の提供・販売を行い、地元地域の魅力発信に貢献しました。
日本工学院ITカレッジでは、学科や専攻ごとに目標資格を定め、資格対策の科目を設けて学生の資格取得をサポートしています。観光コーディネーター専攻では、「国内旅行業務取扱管理者」を目標資格に設定。資格取得にチャレンジしたい人は、2年次前期に資格対策科目を選択し、毎秋行われる試験(マークシート方式による学科試験)に向けて、集中的に受験対策を行うことができます。
国内旅行における企画やスケジュール管理など、旅行業務のすべてを管理・監督するために必要な資格です。旅行に関わる数多くの資格の中で唯一の国家資格であり、旅行業者は各営業所に1人以上この資格の保有者を配置することが義務づけられています。したがって、この資格を取得すれば就職に有利となり、また一人で旅行会社を立ち上げることも可能です。
日本の観光産業をリードする星野リゾートのスタッフが講師となり、観光産業や観光コーディネートについて基礎から教えます。また、航空業界や旅行業界からプロを招き、ツアー旅行やホスピタリティに関する講義を実施。これらの授業を通じて、学生は観光人材(地域の観光産業を担う人材)に必要な幅広い知識・スキルを習得することができます。
業界研究
観光コーディネーターが
必要な業界
観光コーディネートのスキルを持った人は、行政、一般企業を問わず、さまざまな分野から求められています。近年は観光関連事業を担うNPO法人も増えており、活躍の場がいっそう広がっています。
ホテル業界
マーケティングの知識を備えたホテルスタッフとして、地域の行政や住民と連携しながら、さまざまなプログラムを企画・実行し、地域ブランドづくりや街おこしに貢献します。
観光業界
観光コーディネーター資格(日本観光士会)を取得し、企業内スペシャリストや観光コンサルタントとして、観光特産品の企画開発やコーディネートを行います。
旅行業界
旅行会社や実店舗を持たないOTA(オンライントラベルエージェント)のスタッフとして、地域の企業や行政と交渉し、さまざまなツアーを企画・運営します。
公共分野
県庁や市役所の観光課などの職員として、地元の企業やメディア、旅行業者と連携しながら、地域資源を活かした観光メニューの開発や広報を行い、地域の活性化をはかります。
NPO
NPO法人のスタッフとして、地域の企業と連携しながら、エコツアー(自然体験ツアー)の運営や観光情報提供などの観光関連事業に取り組み、観光地づくりに貢献します。
情報ビジネス科
ホテル・観光コース
遠藤 麻由 先生
観光コーディネートの重要性
旅行の醍醐味は、その土地の食や文化を体験して、新たな経験や出会いをすることです。しかし、限られた時間でその街を深く知り、街の魅力を味わい尽くすことは困難です。情報があふれかえっている今だからこそ、お客様とのコミュニケーションを通じて、お客様に合ったその土地の魅力の提案が求められます。そのためにはその土地を知り尽くすとともに、お客様のニーズを聞き出すコミュニケーションスキルが必要になります。観光コーディネーターの仕事は、お客様の旅をより豊かにする仕事なのです。
観光コーディネートの仕事をめざす人へ
ホテル・観光コースでは、学園祭や日本工学院のある大田区蒲田の地域イベントなどで、地元蒲田の魅力を伝える取組みを行っています。例えば学園祭では、蒲田の街や物産の案内を行いました。学んだことを実践して身につける機会が多くあり、クラスのみんなで観光コーディネートについて楽しく学んでいます。興味がある人は、ぜひ私たちと一緒に星野リゾート流コミュニケーションの考え方を学び、お客様の旅を豊かに演出できる人材をめざしましょう。
日本工学院をムービーでご紹介
ここがポイント!